英語でXのお題 (パラレル/シリアス/カミ中心)


I.Crossing the rubicon ―賽は投げられた―

いつまでも、いっしょにいられると思っていた。
剛君と健君…。
一コ年上の幼馴染みで、親友。
俺達は戦争ある世に生まれた。
貧しくって何も無い世界。それでも三人いっしょだったから幸せだった。
三人がお互いに作ったプロミスリング。
右手首の赤と青の二本のプロミスリングが繋いでいてくれると信じていた。
それが、音を立てて崩れた。
いつものようにまたねと言って別れたあの日。
次の日にはもう二人ともいなくなっていた。
あれが最後の別れだと気づけなかった自分が悔しかった。

そして、二年後。
戦争が激化し、二つの対立国の戦いを中立国が見守るという戦況になった。
俺は中立国の諜報部として暗躍していた。
その時に見つけてしまった。
「どうして・・・」
両国のデーターの中に会いたいと願っていた二人の顔を・・・。









II.A little prayer for you ―ささやかな祈り―

「健、用意はいいか?」
今日もこの手に握る銃は冷たく重い。
それが命を奪う重さだと父さんは言った。
表面上では激化しているが、
もうそろそろこの戦争も終わりを迎える。
双方、軍事力がもう衰えているから。
もうすぐで決着がつく。
そうしたら、会えるかな・・・。
岡田と剛に・・・。
でも、今更どのツラ下げて会いに来たんだよって怒られそう。
それでも、会いたい。
右手首の緑と赤の二本のプロミスリングを見る。
俺は青色のプロミスリングを二人に作ってあげた。
再び三人で出会えることを願って。
会えたら、何も言わずにいなくなったことを許してもらいたい。
剛と岡田はきっと故郷であるあの国にまだいるはず。
あそこは今では中立国となっているから、きっと生きている。
そうでなくても生きているはずだ。
「うん、出来てるよ」
二人に会えることを願い、今日も戦場に立つ。









III.I've been searching you ―君を探してるんだ―

「相変わらず、容赦ないね〜」
「てめぇもだろ」
戦闘の途中にそんな軽口を叩けるほど、敵は減った。
もうこれ以上向こうも兵を出せないはずだ。
でも、こちらもそれは同じ。
はっきり言って俺は勝っても嬉しくない。
俺はこの戦争を終わらせるためにここにいる。
早く終わらせたい。
それが、俺の願い。
それで、会いたい。
岡田と健に・・・。
右手首の緑と青の二本のプロミスリングを見る。
俺は赤色のプロミスリングを二人に作ってあげた。
再び三人で出会えることを願って。
あの日黙って行ったことをきっと怒っているだろう。
もしかすると、中立国に加盟している国に移り住んでいるかもしれない。
それでも、見つけ出してみせる。
今、目の前に映っているのは戦争後の焼け野原。
でも、俺はこの先にある平和の世界に行って、必ず二人を探してみせる。









IV.Nothing can hold you back ―君を止めることはできない―

次の戦いが最後になる。

そんな情報が耳に入った。
確かに誰の目から見てもそれは一目瞭然だった。
お互いがお互いのことをよく分かっている。
そして、同時に次に出る行動も
「次は小細工ナシの一本勝負だな」
「…うん」
それはつまり二人が戦場で会う事。
データーによると、幸か不幸か二人は一度も会っていない。
最初で最後の戦場での邂逅。
「どうしてなんやろな・・・」
「幼馴染みのことか?」
同じ諜報部の先輩であるいのっちにコクンと小さく頷いた。
「二人とも戦争が嫌いやったんやで、それなのに・・・」
「それだから、じゃねぇのか」
フッと見上げた先に見た顔は、遠くを見て何かを思い出すような顔。
「戦争が嫌いだからこそ、終わらせたかった」
その言葉はまるで自分に言い聞かせるようにも見えた。
スクッと立ち上がり、俺を見下す目は酷く淋しい目。
でも、目を離せなかった。
「始まったら、お互いがお互いを止めることはできない。
俺はお前がどんな行動をしようと止めない。
だから、悔いの無い行動をしろよ。」
クシャッと頭を撫でて、その場を去った。
俺の取るべき行動が分からぬまま、日は沈む。









V.Do or die ―殺るか殺られるか―

明日で全て終わる。
長かった戦争がやっと幕を下げる。
カーテン・コールは無い。いや、させない。
明日は最前線に出る。
生きるか死ぬか。
殺るか殺られるか。
戦場へは幾度だって立って、その手で人を殺してきた。
この国の人、仲間、そして岡田と剛。
俺は背負うモノの為に戦う。
だから、この選択に後悔は無い。
未来を生き抜くために、
俺は明日、命を狩る側の人となる。









VI.It's for the birds ―くだらない―

戦争は明日の一戦で終わる。
思えば戦争ほどくだらないものは無い。
無差別に人の命を一瞬にして奪い取り、世界を手に入れる。
子どもの陣取りゲームと同じ。
得をするのは一握りの強欲な人間のみ。
でも、くやしいことに世界は強欲な人間に都合良く動いている。
でも、もうそれも終わる。
予想を遥かに超えた戦争が軍事力も金も全てをリセットしてくれた。
明日の戦いは反吐が出るこの世界が生まれ変わる儀式みたいなもの。
その後に来る世界が平和な世界であると信じている。









VII.You asked for it ―自業自得だ―

全てを決める運命の日

何人を殺したかなんて憶えていない。
殺した相手の顔も見ていない。
見たら、手が罪悪感で動かなくなるから。
いくら血で汚れても動かせ!頭に絶えずそう命令し続ける。
殺らなければ、殺られるこの戦場に情はいらない。
どんなことをしても生き残らなければならない。

それが、岡田と剛に会うためだから。 それが、岡田と健に会うためだから。

「っくそ、弾詰まりかよ!」
銃撃戦の最中、単身で飛び出し走りだす。
人の間をくぐり抜け、通り抜けざまに脇腹を裂いていく。
切れ味の鋭い刃は、次々に命を奪っていく。

キンッ

切れ味の鋭い刃が重なり合う金属音に阻まれ、目に飛び込んできた映像はナイフを持っている手首の、

緑と青の二本のプロミスリング。 緑と赤の二本のプロミスリング。

そして何かに引かれ合うように相手の顔を見てしまった。

「・・・剛」 「・・・健」

二年ぶりに再会した顔はもう別れた日の顔ではなかった。
二年の月日は全てを変えた。
お互い誰よりも平和を切望していた。
だからこそ分かった、お互いがどうしてここにいるのか。
不器用な自分達の取った行動は同じだった。
ただ一つ違っていたのは、敵同士ということ。
これは神様からの罰であり警告なんだ。
多くの人の命を奪ってきた者に平和は降り注がない。
だから、最後の最後で巡り合わせたんだ。
それなりの罪を犯してきたんだ。
「「自業自得か…」」
二つの音声が同時に同じ言葉を紡ぎ出した。
お互いの考えはよく分かっている。
だから、もう言葉はいらなかった。
距離を置き、もう一度ナイフを構え直す。
そして、同時に地を蹴った。









VIII.History repeats itself ―歴史は繰り返すもの―

歴史が動くその時は刻一刻と近づいていた。
戦況は最初から混戦状態で、
どの兵も、自分と違う服を着た存在を殺すロボットと化していた。
出し惜しみのない全てを押し流すように撃たれる大砲。
この中に剛君と健君はいる。
「岡田」
振り向いた先には何か黒い物体を持ったいのっちの姿。
「俺は、お前には後悔してもらいたくないんだ」
ドサッと俺の前に黒い物体を落とす。
「これって!」
「ちょっとくすねてきた」
いつもの様に細い目を更に細くして笑ういのっちの顔をまじまじと見た。
黒い物体の正体は軍が極秘裏に特別開発していた戦闘服。
「俺は見ていることしかできなかったからさ・・・」
「え?」
「とにかく行けよ!」
急かすいのっちに逆らえず、戦闘服を身に着け戦場に身を投じた。

「これでよかったんだよね・・・。坂本君、長野君」
岡田は最初見た時から俺に似た境遇を持っていると直感で分かった。
あの時の俺は何もできず、ただ見ているだけで何もできなかった。
二人がこの世から亡くなる瞬間も見てやれなかった。
だから、岡田には同じ轍を踏ませたくなかった。
これが俺のできる最大の優しさだから。
坂本君と長野君と俺が歩んで来た歴史と同じものを繰り返すなんてさせたくなかった。









IX.All's fair in love and war ―恋と戦争は手段を選ばず―

数千、数万といる兵の中からたった二人を見つけられる可能性は限りなく0に近い。
それでも…探し出さないといけないと使命感に駆られる。
右手首の二本のプロミスリングをギュッと握り、願う。
二人に会わせて欲しいと。
突然吹き荒れる突風は、俺をどこかへ誘う様に背中を吹き付ける。
人の波は意志を持っているかのように一本の道を開く。
迷っている暇は無かった。
人波の作る一本の道を走り抜ける。
不思議と流れ弾が一発も当たらない。
まるで、この道だけ戦場から厚い壁に守られ隔離されているようで、
その先にやっと見つけた。
でも、お互いの肩に顔を埋める形の不自然なまでに近い距離。
「剛君っ、健君っ!」
叫び声に近い、自分でも聞いたことの無い声で必死で叫び走り寄った。

その時、手首にしていた赤と青の二本のプロミスリングが音もなく切れた。

心臓は高鳴り、風が逆巻く。
それを拾って二人に近寄き、無理矢理引きはがすと
目を覆いたくなるような血にまみれたナイフは、お互いの身体に深々と刺さっていた。
「なっ・・んで!」
二人の赤と青のプロミスリングも切れて、色は血で紅く染まりかろうじで分かる程度だった。
「俺・・達が、いなくなんなきゃ…平和は・・こ、ない」
「俺ら・・・には、平・・和を感…じ、る資格は、ねぇん…だよ」
二人の言っている意味が分からなかった。
剛君と健君がいなくならないと平和はこない?
平和を感じる資格がない?
俺は声を荒げた。
「二人がいない平和な世界なんていらへんっ!!」
ただ、子どものようにわがままを言って、
「平和は生きる者全てに与えられるもんやないんかっ!!」
ただ、子どものように喚き散らして、
「・・・・ごめんな」
「ごめんなんて言葉が聞きたいんやないっ!!」
あの頃のように少し困った顔して怒ってよ・・・。
「独り、にして・・・ごめんな」
それは今までことに対して?それとも・・・
「お前…は生きる・・・んだ」
そんな言葉聞きたくない。
「平和なんて・・・こないよ」
「「くる・・・よ」」
二人の確かな答えに顔を上げると、二人とも握っていた左手を広げた。
その手の上には、俺が二人にあげた緑のプロミスリング。
三人でいることが当たり前だと思っていた時に、
平和な世界になるようにと願って編んだプロミスリング。
「俺らが、お…たがいを刺し・・た時に切れたんだ」
「だか、ら・・もう来るよ」
「・・・っく、ごぉく…ん、け・・・んくん」
いつも俺が泣いた時は、二人が笑顔にさせようと俺に笑いかけてくれた。
そして、今も笑っている。
最後の時まで俺のことを心配して笑っている。
もう残された時間はあと僅か。

「悔いの無い行動をしろよ」

最後まで子どものままでいていいのか?
もう子どものままでいちゃいけないんだ。
安心させてあげたい。
二人を心配させたままにしておきたくない。

ほんの少しでいいから、俺の時よ早く進め。
そして、ほんの少しの間で良いから、大人にさせて欲しい。

「・・・ありがと」
この言葉を言うために。

その言葉を聞いて眠るようにこの世を去った。









X.From A to Z ―最初から最後まで―

「剛君、健君」
答えが返ってこないけど、それでも構わず話続ける。
「やっと、待ってた平和が来たよ・・・」

戦争は終わった。
あのプロミスリングが指し示した通り全ては終わった。
世界再生に一番早く動いたのは、やはり俺が所属していた中立国だった。
避難民への物資配給、追悼慰霊碑、医療スタッフを世界各国から集めるなど、
医療面においても、生活面においても適切かつ迅速な処置を施し、世界は再生へと向かっていく。
失ったモノは多い。でも、得たモノや気付いたモノがある。
回り道を随分した果てに得た確かな平和がある。
それだけでも嬉しかった。

「やっぱ、ここにいたのか」
「いのっち」
よう!と手を挙げて持っていた花を二人の墓前に供える。
「いのっちのお陰でちゃんとした二人のお墓を作れたから…」
戦場でいなくなったものは大抵は区別もされず、大量火葬とされていた。
一刻を争う戦争の最中での苦肉の策だった。
俺もそれを分かっていたから、二人をどうにかして連れて行き、
自分の手で二人を空と地へ帰したかった。
でもどう考えても二人を連れていけるほどの体力もない。
だからと言って二人を引き離すことはできない。
そう思っていた時いのっちが俺の前に現れ、力を貸してくれ今に至った。
「でも、どうして俺の位置が分かったん?」
「お前に渡した戦闘服は盗難防止に発信器が付いているからな。」
いのっちに言われて、あぁ…そうかと思った。
ジッと見つめてくるいのっちの優しい目に微笑み返す。
「あの時、背中を押してくれてありがとう。」
「後悔しない選択ができたんだな」
「おん」
クシャと撫で自分のことのようにいのっちは喜んでくれた。
「大切にしないとな・・・」
「おん」
この平和は多くの人の希望であり願いであり、
そして、二人の優しさの形だから。

「それじゃ、もう行くよ。剛君、健君またな」
ゆっくりと二人の墓石の前から立ち上がり、答える。
いのっちが少し離れた場所で待っている。
そして踵を返し、立ち去ろうとした時
またねー― ―またな
風に紛れて二人の声が聞こえた。
聞き間違いでもなく、気のせいでもない。
「・・・またな」
振り返り、もう一度墓前にある六本の切れたプロミスリングに
向かって小さく呟いた。









総合あとがき
今回は十個で一つの話になっています。
英語と言うことで、お題番号も英数字にしました。
雰囲気を大切にしたかったので、そうしたんですが雰囲気出てました?
これは他のに比べて表現が結構露骨でしたが、
やっぱり露骨すぎましたかなぁ…。
露骨すぎて、ひいた方はすみません。
でも、私的にはこの話気に入っています。

カミセン+イノ中心でしたが、坂本さんと長野さんもちょい出てました。
いのっちがおいしい役なのは、愛の大きさってことで…(笑)
三人がしていたプロミスリングの色は光の三原色です。
光の三原色を合わせるとできる白で平和を意味したかったので、光の三原色にしました。
(代案ではサンダバのときの色とかイメージ色とかがありました。)

六本の切れたプロミスリングの所は偶然です。
最後に書く時に合計何本だ?と思って数えたら六本でした。
知らず知らずの内に六本にしてたみたいです。
それともう一つ、「〜空と地へ帰したかった。」という所は
少しだけセカチューを意識して書きました。

                          2005/9/22(Thu)




お題配布元
constituent-構成物質-




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