一匹の親猫と一人の男 ７月２４日 今日は俺の誕生日だったりする。 そんな日に俺はオフで、他のメンバーは仕事が入っている。 みんな舞台やドラマで忙しい。 久しぶりのオフを満喫しようと思ったら、今日が自分の誕生日だという事に気づいてしまった。 意識してしまうと、何だか…いや、これ以上は言わないようにしよう。 言ったら、長野に“おじいちゃんは寂しがりだから”と言われるのは目に見えてる。 そんな気を紛らわそうと煙草に手を伸ばして、握ったらクシャと音を立てる。 「煙草切れてるし…」 外についているビニールを剥がして、残りを丸めてビニールとは別のゴミ箱に向かって投げる。 コンッとゴミ箱にぶつかり入るのを見届け、鍵と財布を持って外に出た。 もちろん、目的は煙草を買いに行くため。 コンビニに煙草を買いに行って約２０分後。 雑誌を立ち読みしていたら、いつの間にかそんな時間になっていた。 「あちぃ…」 夕方になって昼間の眩しい日差しは無くなったが、蒸し暑い。 家まで帰るのも億劫になる。 さっさと家に帰るべきだったと後悔し始めたときに、耳に入った小さな鳴き声。 家に帰る道から一本外れた道の塀の上から聞こえた。 猫が六匹。 親猫が二匹と、塀の上で寝ているのが一匹に落ち着きの無いのが一匹に 道路でじゃれている二匹の計四匹の子猫。 近づいても、逃げようとしない。 むしろ、落ち着きのない子猫が猫パンチよろしくな感じで前足を出してくる。 その隣にそっと親猫の一匹が寄り添う。 もう一匹の親猫はよほど、人間慣れをしてるのか、人間不信なのか全然動こうとしない。 ただ、ジッと青い双眸で俺を見つめている。 猫なりに俺を観察しているようで、俺も目を離さなかった。 突然、親猫の方がフッと目線を反らして、道路でじゃれている二匹の子猫を見た。 親猫のそんな行動に妙な親近感が沸いた。 自然と手が動いて、動こうとしない親猫に近づいて、撫でてやる。 「お前もなんか大変なんだな。」 抵抗もしないで静かに撫でられているが、目がやめろと訴えている気がした。 なんか、俺に似てるなコイツ…。 猫を自分に置き換えて考えたら、この歳で頭を撫でられるのはちょっと…と思ったので 撫でるのをやめて、六匹の猫達と別れた。 家の前に着いて鍵を出すのに手間取っていたら、先に扉が開いた。 自動ドアにした覚えなんて無い。 内側から、ヘラっと笑った特徴のある細目の顔がひょこと覗かせた。 「おかえり、坂本君」 「た、ただいま…」 何で俺の家に居るのとか、仕事はどうしたとか聞く前に、井ノ原が俺の腕をグイっと引っ張って 玄関に鍵を掛けて、俺の背中を押す。 「主役のとう、じょーうっ！！」 ボクシングの登場シーンを思わせるように声を張る井ノ原が、 少し乱暴にリビングへの扉を開けると、今日仕事でいない筈のメンバーの姿。 「なんで居るんだよ」 「何でって…」 健の言葉を長野が引き継ぐ。 「今日、皆オフだよ。」 「は！？」 俺が聞いた話と１８０度違う。 「坂本君騙されてたんだよ」 いたずらっ子のように笑う剛。 「今日、仕事入れるワケないやんか」 柔らかい口調で答える岡田の隣でそうそうと頷く健。 「最初は家に予告無しで突撃しようかと思ったんだけど、坂本君どっか行っちゃたから 帰ってきた時にびっくりさせるのに変更したんだー」 「どう？驚いた？」 俺の顔を伺う井ノ原と剛と健と岡田。 少し離れた所で、その姿を笑顔で見守る長野。 「ああ、驚いたよ」 俺の答えに満足して、顔を見合わせ笑う四人。 「今日は俺らがご飯作るよー」 「坂本君が作る物よりおいしいモンができちゃったりして」 「そしたら、俺ら天才じゃん」 「坂本君待っとってな？」 言われた通りに台所を離れて、リビングで待つ事にした。 「嬉しそうだね」 隣に座った長野が、ふんわりと微笑む。 「ああ、嬉しいよ」 俺の顔を見て苦笑する長野。 きっと今すごい緩みきった顔してんだろうな。 「俺も仕上げ手伝ってくるよ。ゆっくりしててね」 四人の輪に長野が加わって更に賑やかになる。 さっきの親猫の気持ちが分かった。 あの親猫も幸せだっただろうな。 今の俺が幸せな様に。 「「「「「Happy birthday　坂本君」」」」」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　END あとがき 坂本さーん、お誕生日おめでっとーう！ なにか、書かなければ書かなければっ！と思っていて出てきたのが、コレです。 ２時間ぐらいで書き上げたものなので、多くは語りません。というより語りたくありません！（笑） 短いですが、愛♥はあります！ 最後にもう一度 坂本君、お誕生日おめでとう！！！ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００５／７／２３（Sat）

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